同一労働同一賃金制導入の背景

厚生労働省と経済産業省が進めている働き方改革。

働き方改革の主なテーマは「強制力をもった残業の制限」と「同一労働同一賃金制」です。
残業抑制政策の取組の背景は、従業員の副業解禁や健康維持、自殺防止ではありません。

日本の総GDPは全世界で3位ですが、為替等調整後に労働者1人当たりでGDPを割ると17位に落ちます。
ちなみに、18位はギリシアです。
ギリシアは金融危機の際、国民のほとんどが国家公務員で日本に比べてまじめに働いている人が多くはない、と話題になった国でした。
そのくらい、日本の労働者1人当たりの生産性は落ちているのです。

アウトプット=インプット×能率です。
日本の労働市場ではこのインプットに労働時間が入るのですが、
GDP=総労働時間(1人当たり労働時間×生産人口)×平均能率とすると、人口減少社会の日本はどんなに残業を頑張っても段階の世代時代のGDPから減少します。

そこで、政府としては労働時間以外の要素をインプットに代えていきたい。
これを実現するための1段階目が、総量規制である残業抑制。2段階目が、質への転換である社会人の再教育になります。

短期的には、従業員は残業できなくなるため月々残業代は発生しなくなり受取金額が減少します。
その分以上のボーナスや成果給に反映できる制度と運用をしない会社からは従業員は去り、制度と運用ができる企業だけに従業員が集まるという状況になっていくでしょう。

残業抑制は、GDP600兆円を実現する為に個別の従業員の残業支払いは論点に入っていません。
働き方改革は、従業員の幸せの実現を二の次としていると捉えて、企業と従業員共に対応していくことが合理的であると言えます。

ちなみに、同一労働同一賃金制の取組の背景は、段階の世代ジュニア以降の労働者がもつ労働環境への不満解消です。団塊の世代ジュニア以降の労働者は、大卒の際に超氷河期、非正規雇用、派遣切り、と雇用条件に恵まれない世代と言われています。
結果として、収入面も安定せず不遇な境遇にいる方が多いとされています。

そこで、労働市場の不満は政権基盤を揺るがすため、政府は有効求人倍率を高め、非正規雇用者の正社員化を進めるとともに、賃金を向上させる取組をしています。しかし、同一労働同一賃金を実現しなければ、賃金を向上させたところで不満は解消されません。
これを解消するために、同一労働同一賃金制を推し進めようとしているのです。