プレイヤーとしては優秀な人材が管理職になった場合に躓く壁

プレイヤーとして高い実績を上げた人材から管理職になっていくのはよくあることです。しかしながら、プレイヤーとして優秀な人材は管理職としても優秀か、というと必ずしもそうとは限りません。場合によっては自らがプレイヤーとして優秀であるがゆえに、部下に自分のやり方を押しつけ、うまくいかないと怒鳴る「パワハラ上司」になってしまうこともあります。
では、なぜプレイヤーとしては優秀な人材が、管理職としてはイマイチな行動をとってしまうのでしょうか。その理由と対応策を紹介します。

(1)プレイヤーとしては優秀な人が管理職になった場合に躓く理由

理由①自分のやり方に自信がある

プレイヤーとして多数の業績を上げてきた管理職は自分のやり方に絶対的な自信を持っています。
自信があることはもちろん素晴らしいことですが、その上司のやり方が全ての部下に合うとも限りません。自分のやり方に自信があるが故に、部下の性格や考えていることを考慮せず、自分のやり方を押しつけてしまい、結果的に部下がついてこなくなってしまう……ということがよく起こります。

理由②「できない部下」の視点に立てない

プレイヤーとして優秀だった上司は、なかなか「できない部下」の気持ちを理解することができません。
自分自身にも右も左もわからない新人だった時代があったはずですが、プレイヤーとしての成功体験が邪魔をし、それを思い出せなくなってしまっているのです。
自分が「この部下の性格、経験年数、スキルだったらこの場面でどう思うか」という視点で考えてみると、今の部下の悩みや躓きの原因が見えてくることがありますが、どうしても「今の自分」の視点から物事を考えてしまうので、「自分はこの程度のことは簡単にできる。なぜあいつはできないんだ」という怒りや困惑の気持ちが先に立ってしまいます。

理由③プレイヤーとマネージャーに求められる役割は根本的に異なる

極めて当たり前のことですが、プレイヤーとマネージャー、それぞれに求められる役割は根本的に異なります。
プレイヤーに求められる役割は、与えられた業務を遂行することです。期待されることとしては、自分自身がいかに高い水準で業務を遂行できるか、ということであり、高い水準で業務を遂行できる人材=優秀な人材となります。
一方、マネージャーに求められる役割は、プレイヤーに対する指導や管理であり、期待される役割は、指導や管理を通じて組織の成果を最大化させていくこと、にあります。求められる、または期待されることはあくまで組織成果の最大化です。決して自らが高い水準で業務を遂行できることではありません。大げさに言えば、全く業務を遂行することができなかったとしても、指導や管理により組織の成果を最大化することができれば、その人材は優秀なマネージャーと言えます。このように考えれば、優秀なプレイヤーが優秀なマネージャーでないことはきわめて当然なこととも言えます。

(2)そんな管理職が変わるために学ぶべき3つのこと

では、そんな自分のやり方を押しつけがちで、できない部下の視点に立てない管理職には、どのような育成を行うべきなのでしょうか。育成方法の例として3つをご紹介します。

①マネジメントの原理原則を学ぶ

プレイヤーとして優秀な上司であっても、昇格したばかりのタイミングでは、当然ながら「マネジメント」の初心者です。ですから、他の新しい仕事を学ぶときと同じように、「マネジメントの原理原則」を知ることが必要です。普通の仕事であれば、仕事を任せる前に必ず必要最低限の教育、指導を行うにもかかわらず、ことマネジメントのことになると何の指導も教育もないまま任せてしまうケースが非常に多いことは不思議でなりません。
日頃マネジメントを「自己流」で行っていてうまくいかないことがあったとき、原理原則の理論を知っていると「あのときあんなこと勉強したけどちょっと取り入れてみようかな」とマネジメントの幅を広げるきっかけになることが多くあります。また、研修で同席した管理職同士仲良くなり、困ったときに助け合う関係性になることも考えられます。
管理職になったばかりの頃、管理職になって数年後、さらに役職が上がるタイミングの3回くらいは、外部研修や社内研修を活用してマネジメントを学ぶ機会を作りましょう。

②360°サーベイとフィードバック

プレイヤーとして優秀な管理職が管理職としてうまくいっていない時、自分自身が部下にどのように思われているのかを実感し、自分のマネジメントスタイルを振り返ってもらうことが有効です。
社内で部下や同僚、上司が管理職に対して評価をする「360°サーベイ」を実施しましょう。
ただ、実施をして結果を返すだけでは管理職が自分への評価を受け止められない場合もあります。
対象の管理職の上長が面談を行いながら結果を返却する方法、専門のカウンセラーやコーチがフィードバックを行う方法、研修を実施し管理職同士で結果について話し合う方法などがありますが、大切なことは、結果について人と話し合いながら理解を深め、日頃のマネジメントを見つめ直す機会にすることです。

③傾聴・コーチングスキルの習得

プレイヤーとして優秀だった管理職は自分のやり方を押しつけがちで、部下の視点に立てないことが問題であると冒頭に示しました。そういった方のマネジメントの仕方は「アドバイス」に偏りがちです。
一方で、真に部下が抱えている問題を理解し、できることから一歩ずつ取り組み、成長させるためには、部下の話をしっかりと聞くことが重要です。
そのため、「傾聴」や「コーチング」のスキルを学び、「聴く」マネジメントを実践するだけでも、部下の管理職への印象は大きく変わるでしょう。
ただ、「傾聴」「コーチング」のスキルは一朝一夕には身につきません。
学びと実践の繰り返しによってやっと身につけることができるスキルですので、研修を実施する場合は少なくとも1回以上のフォロー研修も含めて組み立てましょう。もしくは、産業カウンセラーやコーチング等の資格取得費用支援を行うことで専門機関でじっくり学ぶことを促進しても良いでしょう。

(3)まとめ

プレイヤーとして優秀な方が管理職になったときに必要な育成についてお伝えしました。
・自分自身のマネジメントを振り返る機会を作ること
・マネジメントの原理原則を学ぶこと
・傾聴・コーチングスキルを身につけること
この3つのポイントを踏まえて管理職の育成に是非取り組んでみてください。


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